前例なし人生
時折、こういう人にであう。
「やったことがないからできません」「教えてもらってないのでできません」
生徒さんがこうおっしゃった場合には、まず概要を説明し、到達点をイメージさせ、そして、横にいて、目の前でやっていただいて、安心していただく。
仕事関連でそう言われてしまった場合には、やる気があるのかないのかを検討し、そして、検討次第で黙る。(私が黙るなんて奇跡に近いのに!)
やったことがない、でも、楽しそう、やってみたい!そう思える人は、もしかしたらあまり多くないのかもしれない。
やったことがない、怖い、だからやりたくない。これは老化のせいなのかもしれないし、そうやって、会社や家庭で育てられているのかもしれない。
日本という土壌がそうなのかも。代々土地を守っていて、村には長老がいて前例を示す。
少なくとも、前と同じにすれば、大きな間違いはない。前例を大切にするのはリスクを冒さないためでもあるし、それはそれで正しい。大きな変革がないだけで。
なので、新しいことにであっても、新しいサイトに出会っても「使ったことがないからこのサイトは解らない」とトップを見て判断する人は少なくない。あるべき場所に、あるものがない場合に限り、であるが。
だから、シニア層も使えるウェブサイトにはルールがあるのだ。というちょっとした宣伝。(笑)
さて、「前例がない」と動けないという話。
多くの企業が今のシニア層市場を掴み損ねているのは、本人たちも迷走しているからじゃないかなと思うことがある。
元気すぎる60歳代の、70歳代の前例がないのだ。それも、シニア層自身の中に。もちろん、それは若手の中にも。接してないから「想像がつかない」。
私は今、31歳だが、「そういえば、○○さんは31歳の時、もっとかっこよかったなあ。私もしっかりしなくちゃ。こんなバカみたいな事ばかりやってちゃだめだ!」と思うことがよくある。前例と比較しながら人生を歩む。
さらに、いつの間にか31歳になったが、いつ31歳になったのか解らない。
理想の31歳はあっても、自分はそれとはちょっと違う。だから、前例がない。(ちょっと極端な例だけど)
シニア層も、自分は60才であり、70才であり、自分の意識の中で、○○さんの60歳、70歳はたくさんあるが、それを自分にあてはめられるかというと、ちょっと違うんだと思う。
たとえば、今日若手のWさんが御来社くださり、いろいろ雑談の中で、「シニア層はもう恋愛とかないでしょうー」という話になったが、先日いらした70歳代の男性は「先生、えっちなホームページの見方を教えて!」と笑いながら言って、うちのかわいい女子大生たちがドン引きしていたくらいだ。女性だって灰までという。実際、灰までだ。
そう、シニア層自分自身が、60歳、70歳代はそうあるんだと思っているんだとおもう。しかしながら、自分は違う。それとは、大きく違う。自分が思うその年代よりもはるかに若い。
そうすると、どうふるまえばいいのか分からない。
そういう人たちにアンケートをとっても、結果が現実と乖離しちゃうのは仕方ないことなのではないかと思う。
自分でも想像できない、前例のない人生は、ご本人も想像がつかないだろうから。
だから、ヒアリング調査なんだなあと、一昨日、ややシニア層に当たる(といったら失礼ですか?お兄様。)Tさんとランチしながら、そう思った。
前例がない人生も、カスタマイズ人生とかオーダーメイド人生とか思うと楽しいのだけど、自分がどうなるか分からないとか、寝たきりとか認知症とか、不安が沢山あって前例がないというのはやはりちょっと怖いなあと思う。
もっと若者は高齢者と触れ合って、いろいろな前例をケーススタディとして学んでいくのがいいなあとも思う。高齢者もいろいろですから。なりたい人、なりたくない人。