オフィス退去備忘録~その1 ことのはじまり~

COVID19(新型コロナ)が世界に蔓延しはじめた。
アメリカが欧州からの入国禁止をしたというニュースを見て、これは大ごとになるぞ、と思った。

3月後半からの新入社員事前研修が続々と見送りの連絡が来る。
例年なら4月は研修の予約でいっぱいなのだが、今年は3件しか予約がない。
他2件はオンライン研修になったら申し込むという話になった。

漠然、かつ、猛烈な不安は、9年前のこの日、東日本大震災を彷彿とさせた。

あの時に、何をすべきだったか、を思い出した。
生き抜くためには、とにかく固定費を減らすことだ。
手元資金に余裕がなくなると、心の余裕がなくなる。
心の余裕がなくなると、声を出せないまま沈みそうになる。
「助けて」と言えるためには、少しでも余裕がなくてはいけない。

人件費は信頼関係なのであまり手をつけたくない。となると、最初に削減候補になるのは家賃である。
打ち合わせはすでにほぼZoomに移行していたし、広いオフィスはもう必要ないだろう。

当社はワンフロア(2部屋)オフィスを借りている。
ビルは築26年。今回返そうと考えているのは、早稲田通り沿いではない奥の部屋(借りていたのは9年、広さ85㎡。)である。震災後にたまたま空いて、念願のワンフロアを借りることができ、その後色々あった。が、感傷に浸っている暇はない。

契約を確認する。解約は3カ月の申し出だ。今日、解約を申し出れば、最悪ロックダウンで稼働できなくても3カ月の家賃なら払える余力はギリギリある。

早すぎる決断かもしれない。しかし、決断した。

そして次の日、不動産屋さんにオフィスの解約を申し出た。
「そんなに急がなくても…」と不動産屋さんは言った。
「それでは、原状回復は指定業者なので、見積依頼かけておきますね。指定業者さんちょっと割高だから100万くらいは心づもりを持っていた方が良いわよ」

100万円か、結構するなあ。

と思いながら、電話を切った。
これがすべてのはじまり?だった。

原状回復のための現場チェック

3月23日、現状確認のための現場チェック。指定業者さん8名がいらした。
部屋を仕切るパーティションのサイズを測ったり、1時間ほどかかった。

それからしばらく連絡が途絶えた。

私は、ひたすらオンライン教材を作る。
そして、研修がどんどんオンラインに切り替わる。
対面研修はキャンセルが続く…。無駄に焦らない。と自分に言い聞かせてひたすら研修メニューを作る。

ある日、懇意にしている地元の施工業者さんが立ち寄ってくださった。「原状回復どうだった?」

「この間見積来ましたよー。8名も来たんですよー。新人研修も兼ねているんですかね」

という話をしたら「その8名分、見積もりに入るから、ちょっと高く出そうだね」と言われた。

嫌な予感がする。

見積もりがきた。

4月7日 緊急事態宣言発令。

弊社スタッフも業務を4月8日からテレワークに切り替えが決まった。
教室は休業である。

そして4月8日。
自宅にPCを持って帰ってみたが、生活音が教材に入り込むため、自宅作業はあきらめた。
私だけ静かに出社し、教材作成を進める。

そんな中、不動産屋さんから、FAXがきた。

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原状回復費用の見積もり、1,815,000円
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何度か見直してしまった。鳩が豆鉄砲食らったらこんな感じの顔をするのではないかと、自分の顔を魚拓(顔拓!?)とりたいほどであった。

100万までは、なんとなく想定していた。

100万でがんばって値切って80万円くらいにならないかな?なんて想像は妄想だった!!

びっくりして思わず見積書をPDFにし、誰かに意見を聞こうとGoogleドライブにアップ。

まず、地元の不動産会社さんに勤めている大学時代の先輩にファイルを見せてアドバイスを求めたところ、「その施工業者さんは地元では有名な有力会社だから、こちらとしては敵に回したくないからアドバイスできない。ただ、高すぎるわけではない。無駄はありそうな気がするけれども、僕からは何も言えない」と言われた。

次に、予言をいただいた施工会社さんにもPDFを見せたら、「ものすごく高いと思ってしまうけれども、その業者さんから仕事もらっているので敵に回したくないから、何も言えない」と言われた。

地元勢のアドバイス・協力は得られないということがわかった。

つづく