覚えなくちゃいけない病

覚えればいい病、というのがあると思う。
たとえば、歴史の年号とか、「覚えなさい。丸暗記なさい」と仰る方もいた。(私の周りにはいなかったけど)
数学の公式とか、覚えなさいと繰り返しまくる人もいた。(運のいいことに私の周りにはいない。)
#結局私は何も覚えなかったので、中学時代、誰がどのクラスだったという無駄な記憶がその容量に詰め込まれた。英単語とか覚えておけばよかったのに。
覚えなくちゃいけない病に、多くのシニア層はかかっている。
たとえば、銀行のサイト。
「私は ●○銀行のサイトは使っているのよ。でも、今度新しく××銀行も使い始めるから覚えなくちゃ」という言葉が出る。
「僕は ×○証券で取引しているから、ほかの証券会社は使えないなあ。まったくわからないよ。覚えるの面倒くさいし、今のままでいいや。」
えー。そんなの、基本的な要領さえつかんじゃえば同じじゃん。
と、使える人は思う。
「パソコンは同じメーカーがいいわ。だって、そうしたら操作性が一緒でしょ。」
まあ、ダイナブックには●ポチなくなりましたけど。操作性という言葉をそういうことを指すのであれば同じじゃない。
さらに、OS部分を指すなら、さらに同じではない。でも、彼らは頑なに思い込む。「前この会社のを買ったから同じメーカーのものがいい。」まあいいけど。
覚えなくちゃいけない、という言葉を本当に良く聞く。
覚えなくちゃいけないんじゃなくて、きちんと概念を理解すれば大丈夫だ、と私は説いてみる。しかし、その言葉は通じない。通じない、というか、たぶん、意味が解ってもらえない。だから、手順を説明する。手順を説明するから手順を覚える。手順を覚えるから、たとえば、ワードで画像が挿入できてもエクセルで画像が挿入できないということに陥る。そう、応用が利かなくなる。
だからなんだ、という話である。
ただ、作り手に、「これを使っている人の応用力とか求めちゃいけなくて、彼らは手順を覚えるということに力を入れているのだ」ということを感じていただきたい。
たとえば、歴史なら、大体の流れが解っていれば、年号なんて適当に頭に入るもんだと思っている。(細かい年号は覚えなくちゃいけないけど)。っていうか、応仁の乱が1800年代なんてことは絶対出てこない。(実話)覚えなくちゃいけないから、忘れる。江戸時代って1500年くらいからある?とかって質問、サムいぼが出そう。(実話)
とはいえ、私もいろいろなところで覚えなくちゃいけない病にかかっている。覚えなくちゃいけないから、なかなかでてこなくて忘れてしまう。典型的な例が運転である。ここ数年運転していないのでなんともいえないが、先日運転をしようとしたら、サイドギアを引くんだか押すんだか覚えていられなかった。車庫入れも、右に回すとお尻がどっちをむいてどうすればいいのか覚えなくちゃ、と教習所で思っていたので、今だによく解らない。(ちなみに課程では、どうしようもなく覚えられないので、先生の手の角度を全部覚えて一発クリア。覚えたからすぐに忘れたし、教習所の車庫以外入れられない。(笑ってごまかす))
でも、多くの受験生はきっと詰め込んでいる。詰め込んだら忘れてしまう。シニアに然り。彼らのメモのとり方を見ているとつくづく思う。覚えようとするから忘れるんだと。覚えよう病はもうどうしようもないんだけど、せめて作り手側から覚えなきゃというプレッシャーを除くということも重要なんだな、と思った。覚えなくてもできること。覚えなくちゃ、と言う前に「ああ、できるのね」。そういう感じを求めたい。