シルバー層向け製品についての雑感
最近では耳にタコができるぐらい、とにかく高齢化社会で80歳なんて珍しくもなくなってきた。
85歳からパソコン教室に通う人が最近増えていたりと、ここ数年はアクティブシルバーに着目すべき時代が来ている気がする。
誰しも、人は老いる。
まさか自分が、と思う。が、老いる。
余談ではあるが、うちの職場のいいところは、自分の先輩がたくさんいて、理想のシルバー像がうすぼんやりとでもできることである。異世代交流をもっとすべき、50歳代は80歳代と話すべきと思っていても、多くのシニア・シルバー層は若い人から刺激を求めても、自ら上の世代に学ぶことは、なかなかない。残念なこと。上の世代の話を無条件に聞くのではなく、自分の将来像としてみるとまた違う見方ができるのに。
さて、シルバー世代。
75歳の時からお教室にお通いいただいているSさんも今は80歳である。
非常にアクティブな方で、とにかくいろいろ出かけている。
75歳のころはものすごく活力のある方だなあ、と思っていた。
しかし、80歳の現在、話していると「ああ、人は皆老いるんだなあ」と思う。
シルバー向けの製品を作るときに必ず注意しなくてはいけないことは、とにかく短期記憶が欠落しているということである。なので、毎回今、どの状態で、これから何をしようとしているかということをさりげなく表示しなくてはいけない。
たとえば、Sさん。
CD-ROMの写真を外付けHDDに入れようとしている。
それは昔からやっている作業なので、特に問題はない。
CD-ROMをセット。そしてスタートからマイコンピュータ。
そこで、彼は言った
「あれ?CD-ROM、入れたっけ?」
私もよく度忘れをする。しかし、今の状況は度忘れというものではない。
スタート、マイコンピュータ、とクリックした段階でCDを入れたことを忘れてしまうのだ。
「え?いれたっけ?いつ?」
手順を間にはさむと混乱してしまう。
その後もCDの問題だけではなく、いろいろな問題で、直前の操作(彼らにとっては直前ではないが)を忘れてしまうのを目の当たりにした。
たぶん、知らない間にそうなってしまうのか?
なんとなくだけど、芸能人とか、知り合いとか、自分より年下の人が亡くなり始めるとそういう傾向が強くなる気もする。朝起きて、新聞で訃報欄を最初に確認してしまうという彼らのセリフが心にしみる。
仲良しだった88歳が、ある日栗をゆでているのを忘れて、気づいたら家じゅうに栗が散乱していたという、あわや大惨事、という事件があったのを思い出した。
今の80歳代はまだ元気である。
前述のSさんも、先日お母様をなくされたばかりである。
元気とはいえ、衰えがある。
地域社会でサポートすることもとても重要だけど、彼らが失敗しない製品をつくるということも、とても重要だなあと最近つくづく感じる。それは彼らのためだけではなく、若者のためにも。そう、大惨事に巻き込まれないためにも。