簡単って?

「そんなこと簡単にできるって言うから。」
「インターネットは簡単よ、って言うから」
「簡単にできると思う」
11月からは血圧が上がる日が続く。
そう、地獄の?年賀状シーズンだ。
朝から45人くらいのシニア層がいらっしゃる。
「年賀状」「年賀状」 思わず、村上春樹のとんがり鴉の話が頭に浮かぶ。
焦る人には何を言っても聞こえない。
彼らにはクリックとエンターとドラッグの違いが解らない。
「だって、このソフトには簡単って書いてある!」とKさん。
「でも、言葉が難しいのよ!」 初心者にとって、ドラッグは直観的ではない。
むっきー。
卵焼きは基本料理としては簡単だ。
だけど、卵も割れない人には卵焼きは難しい。むっきー。
と、心の中で叫ぶ。
ああ、もちろん、卵焼きだって、本当は難しい。
卵焼きの上手さで料理ってわかる気もするけど、それ以前の問題。
「簡単なことだけでいいの。難しいことは嫌なの」
と、Sさんが言う。
でも、やろうとしていることは、そんなに簡単なことではない。
一度作業して、「あ、今の復習する」と途中から戻るものだから、途中工程まで出来上がっていたりして、「さっきと手順が違う。むっきー!」となることもある。頭を抱える。
簡単の定義は人によって違う。
でも、「簡単」は共通語だと思ってしまう。
簡単と言われて、信じ込んだ初心者は、簡単が意外とハードルが高いことがわかるし、簡単とうたった技術者は求められているレベルが、とんでもないことだということをリリース後に知る。
先ほどいらした方も、「動画を貼り付けるだけでいいの!」を繰り返す。「簡単だって」 しかし、どこに張り付けるのか、どういう風にしたいのかは「全然わからない。仕事でなんとなくパソコンを使っているだけだから」
「簡単にできると思う」「基本的なこと」と繰り返す彼女に
「私が簡単だと思っている、基本的なことというのを、お客様が同じ定義をされているとは思わないので、もっと詳細の情報をいただけないと、基本的とか、簡単とか、言いたくないんです」と思わず言ってしまった。
それって常識とか、それって簡単とか、それを測る指標は何だ?
500円を叔母からもらって「わーい」と喜ぶ甥。
その500円の価値は20年後も同じですか?(貨幣価値が変わらないとして)
以外と出来る人がいう
「クリックとかで悩む人っているの?」
解らない人が睨む。
そうかー。結婚も同じ感じか。結婚した人は「結婚なんて時の勢い、できるよ。簡単簡単」みたいなことを言うが、してないひとは「どうやったら結婚できるのか」と悩む。そのくらい、「簡単」の意識って違う。うん、いい例だ。
パソコンも、ソフトも、ネットも、万人に受けたいのなら、ファッション誌くらい「これでこの冬は決まりモテカワ」とかって決めつけ、そこから微妙に応用を利かせるようにうながすというのではいいのではないだろうか。基本の使い方をどうにかマスターしてもらい、そこから毛が生えたような使い方を促す。
最初からあれもこれも、じゃなくて、それもおしつけっぽくなく、「これができればあなたも達人!」「モテカワセクシー決定戦」みたいな感じ。みたいな。
簡単ということばの定義は同じじゃないんだから、「簡単なんだから、まさか質問なんてしないよね?」「常識なんだから、そう考えて当然よね」というプレッシャーを与えるとき以外は、使わない方がいいと思う。