ながら操作と高齢者
1週間のお正月休みをいただき、また教室に笑顔で皆さんが入ってくる。
「お正月休みなんて大変よぅ、親族やら何やらとずっと相手してなくちゃいけないでしょ。疲れちゃったわ」と仰る方も多い。
1週間のお休みだったのだが、1週間は高齢者にとって、色々なことを忘れるには十分すぎる時間である。
心も頭もリフレッシュして教室にいらっしゃる。そして新年が始まる。
さて、Mさんは74歳の好奇心旺盛なお姉さんである。
ただし、高齢者特有の「難しいこととかはイヤなの」という典型的な「元気な高齢者」だ。
毎日の連絡をメールでやり取りするメールなしでは生きていけない人でもある。
そのMさんが突然飛び込んできた。
「大変、ネットが繋がらなくなっちゃったの。だからメールが出来なくて」
「お正月に甥とか沢山来たのよ。で、いじられている間にネットが繋がらなくなっちゃったの」とノートパソコンを持っていらした。
見たら原因は簡単だった。彼女のノートPC内臓の無線LANの電源を甥か姪かはたまた親族が切ってしまっただけなのだ。復活するにはFnキーを押しながらF2キーを押せばいいだけの話である。
「じゃあ、Mさん、Fnキーを押しながらF2を押してください」
「えっ・・・・」Mさんがフリーズする。
実はこの「○○しながら××」という操作、高齢者にとっては非常に難しい。
その理由としては
1)順番の理由を把握していない(一緒に押さなくてはいけないと思っている)
2)キーを離すタイミングがわからない
3)2番目の操作に集中し、1番目の操作を忘れてしまう
4)どちらもキーを押した瞬間に、どっちを先に押したのか忘れてしまい、混乱する
が挙げられる。
Mさんもそうだ。
「えーっと、押しながら」と言いながら、Fnを押してすぐに離し、F2を押してしまう。
「押しながらなので、左下のキーは押したままでいいですよ」と伝えると今度は離すタイミングを失ってしまう。そのためF2キーを押しっぱなしにしてしまい、無線LANランプは付いたり消えたり付いたり消えたり。
「F2はちょっとでいいですよ。ポンッっておしたら離してください」
今度はFnキーがなんだったか、F2キーがなんだったか完全に混乱の状態に入る。
このように「○○しながら××する」というのは高齢者にとって非常に非常に難しい行為なのである。
これは機械の操作の問題だけではない。
ウェブサイトでも、手順がきちんと明示されていないのにもかかわらず、前提条件が満たされていないと操作できないものがある。これは機械の「ながら系」と同じである。
72歳以上の高齢者(データではなく雑感として72歳から如実に認知能力が低くなる)には、前提条件を複数つけてしまうとすぐに混乱してしまう。さらにエラーが出るとそのエラーの火消しに夢中になり、あらたなエラーを引き起こすことがある。
たとえば購入でも資料請求でも、迷わない順序をユーザーに提示することが重要だ。
誰でも年を取るのだから。今から少し使いやすいほうがよい。
余談であるが、ずいぶん昔、夜行列車のムーンライトながらには大変お世話になった。そんなことを突然思い出した。感謝。