できるの定義は難しい。

10月 18, 2017

できる人、というのは、できないこととできることが解っている人だと思う。
って、ちょっと名言だ(自画自賛)

教室をやっていて、一番注意しなくてはいけないのは、「私できる。」という人である。
その「できる」の定義が人によってまちまちなのだ。

Hさんは、「俺はできるんだよ」と入会された。「メールも、インターネットも大体出来るんだ。あんなのちゃちゃっとやればいいだけでしょ。でも、小さい「っ」の打ち方が解らないんだ」と仰った。
Fさん(74歳)もそうだ。「会社でメールのやり取りとか、添付とかはできるんだよ。ただね、インターネットで野球の情報が見たいんだ。それが解らないんだ。」
皆さんはどう思われるだろうか。
「できる」ってなんだろう?って思うことはないだろうか

余談。昔々、10数年前、私が小さかった頃(今でも十分に小さいし、大きさは変わっていないけど)パソコンができる人は、ハッカーなんだと思い込んでいた時期があった。
その頃は「ハッカー」に憧れて、ハッカーはみんなDOSコマンドを打っていると思っていて、DOSコマンドが打てる人を見ると無条件に惚れそうになっていた。私にとって「できる人」はDOSコマンドが打てる人だった。(anE=安易)
そんな私でも、大学では「パソコンができる人」で通っていた。
見よう見まねで意味の解らないDOSコマンドを打っていたからだ、きっと。
いや、同じ時期にパソコンを買って始めた友達が、「ホームページ作れるなんてすごい」って言っていたからそっちかも。ホームページビルダーで一生懸命作ってた。意味も解らず。さらに、COBOLの授業は全く意味不明だったし、結局DOSコマンドは意味が解らなかった。ハッカージャパン(?)という雑誌を3号分くらい買ったけど、ほぼ理解することができなかった。(努力足りない)
「できる」の定義なんて、人によって違う。そんなもんだ。
だから、受付をやるときに生徒さんが「できます」という言葉を鵜呑みにしない。
どこまでできているのか、どんな概念を持っているのかをきちんと聞くようにしている。

「シニア層はもうさすがにパソコン使えるでしょ」
「シニア層もパソコンできるようになったでしょ」
と、聞かれる。
確かに、パソコンは日常品になったし、多くの人が大分「使える」ようになったと思う。
その「できる」が、Yahoo!を見て、知っているお店を検索する、路線を検索する、天気を見る、お気に入りに入っている友達のブログを見る、メールを書く、ということであれば。
人は決まりきったことしかやらなくなる。
自分にメリットがすぐに無いと思えば、それはしない。
若者がやっている?それは自分に関係ないよ、と思えば手を出さない。
ニュースで話題になったら検索する。
それ以上に何を求めて「使える」というのだろう。
彼らは十分に使えているのだ。
自分の使う範囲では。
ただ、多くのサイトは範囲外だし、範囲に入ったところで、難しかったら使わない。自分には役に立たないから。でも、それはシニアに限った話ではない。ネットの世界にいない人は当然ながらそう思っている。自宅でずっとネットするほど暇じゃないと。

年を取るということは、役に立つことばかり選んで実施することなんじゃないかと、思う。
もしくは、役に立つだろうと思うことを中心にやっていると時間がなくなっちゃうのではないかと思う。
昔、そこそこ若いおじさま(50歳代)のユーザーテストをしていた時に「いつもの画面と違うからこれはやりたくない」と言われたこともある。
会社でずっと使っていたけども、決まったことしかやっていないから他のことはできない場合が多い。その先をやろうとしても、難しそうだし、別に他の代替物があればやるモチベーションは限りなく低い。

何年やっていても、できないものはできないし、やっていることはできる。
「使えるようになる」という言葉は万能ではない。
「使える」からといって、何でもできるわけではない。
要は、やれることしか、やらない。

で、ふと考えた。
できる人、というのは「僕出来るよ」とは言わないんじゃないかと。
できる人は「これはできるけど、これはできない」と言える人なのではないだろうか。
私の周りのできる人は「○○はできるけど、Officeソフト製品は良く解らん」という人も多い。パソコンに対して「万能ではない」ということを認識しているからこそ、「できる人」なんだと思う。
反対に、「昔から使っているから僕出来ます」という人ほど怪しいものはない。
実際に、そういう方の入会が多くて、思う。
それは、シニア層だけでなく、若い方も。
確かに、多くのシニア層は「パソコンができるようになっている」。
が、同時に多くの人が「使いこなしていない」と解答しているのだから何ができるのか解っていない状態で「できる」っていう解答を鵜呑みにするのは怖いんじゃないだろうか。
まあ、できる、という言葉が「can」であれば、できるんだろう。
I can fry と言った芸能人もいたくらいだし。私もゴルフできるし、運転できる。(ゴルフは2年言ってなくて、最後は200近くたたいていたし、運転は最後に宮古島で脱輪してから怖くて乗ってないけども。)but I can.

だから、できているから、ユーザビリティを考えなくていい、という訳じゃない。
できているから、自分のサイトやサービスを使ってくれる、使えると思っちゃいけない。
若い人も、シニアの人も、利用者を買い被りすぎちゃいけない。利用者は「できる」けど、あなたのサイトのエキスパートでは無い、ということを、提供者はしっかり認識しなくちゃいけない。
と、思った。
では。
21:44追記
「アメーバピグ」にログインできないユーザーが殺到してスタッフブログが炎上
「問題なく」アメーバピグが使えるが、Flashのアップデートはできない。技術者は、ユーザーは万能だと思っちゃいけない例にいいと思った。「できる人」の「このくらい」は、ユーザーにとっては意味が解らないことで、とても怖いことなのだ。「使える」人が思っている以上に。