「若者が作るシニア層」
弊社にはよく、テレビ局の方から電話がかかってくる。
「○○の特集をしたいんですが、そういうシニア層いませんかね。」
「熟年離婚の特集をしたいんですが、そういうシニア層を用意してもらえませんか?」
この手の類は私の趣旨とは合わないものが多く、「用意して」ってなんじゃい、と思いつつ、自分の中では最大限丁重にお断りするのでありますが、多くの世間に流されている情報とは、大抵は「そうあればニュースになるのにな♪」と想像のシニア層を用意して、当てはめて作るものであるという事を忘れてはいけない。
(勿論、メディアの方が考えるシニア層の姿がおおむね真実であるのであれば喜んで協力させていただいている。)
多くの場合、例えばマスメディアの場合は、1時間話した内の数分を使うに過ぎない。
最近、シニア向けパソコン教室を運営している方がうちに訪ねてくる機会が多い。一緒に話すと「今のシニア向けって、若者に作られた「シニアらしい」シニア向けって多いですよね」という話で盛り上がる。
「若くて、孫が好きで、地域社会が好きで、趣味が多くて」これが大抵作られたシニア層である。シニア層にも「そうですよね」と聞けば、多分「そうです」と答えるだろう。趣味はなんですか、といわれたら無趣味と回答するより多く回答したほうがアクティブに見えるし、孫が好き、というのはちょっとおいといて、お若いですね、といわれれば「そうよねーーーー」と周りを見ずに答えるだろう。
「アルバムって言うとすぐ孫、って発想になるのって貧困だよね」と、運営者の方がいう。
「シニア向けと言うと妙にかわいかったり、孫が絡んだり、なぜ、その行動をシニア層が起こしているかってのを解ってないのよね。」とご夫婦でいらした奥様が言う。
そう、行動を起こした時点の「なぜ」は追求されず、起こした行動のみを追及する。
調査でも曖昧さを避けるために「直近の」という表現は使うが、起こしたことが重要なのではなく、起こした事実がどこに、どうして、それを起こしたのか、勿論、データだけでは見えないわけで、そこはヒアリングに頼るしかない。もしくは、実際の行動を起こした現場に行き、なぜその行動を起こしたか、客観的に観察するしかない。(得てしてヒアリングでは嘘をつくことも多いからだ。聞き方を間違うと嘘で塗り固められたデータしか出てこない。それも本人は嘘をついているとは思っていない。そういう気がしてきちゃうのだ)
若者が作るシニア層、もしくはシニア層はこうあればいいなと言うシニア層を追っている限り、シニア層の心を動かすものはできない。色々と伺わせてくださいという姿勢に出ると模範生になってしまうシニア層のタテマエの姿だけはなく、呑み屋でどんちゃん騒ぎをしながら、その傾向と対策を探っていくことも重要だ。決して「作られた」シニア層ばかりに目を向けるのではなく。
若者が作るシニア層を仮想ターゲットにしている限り、シニア層には近づけない。