当たり前のことが難しい。
とあるサービスを利用しているNさん(75歳)
自宅にはパソコンを持っていなかったため、とある会員制サービスを使うのには顧問をしている会社のパソコンしかなかった。(顧問が会社でそんなことやっていていいの?という突っ込みはおいといて)
ところが、自宅にパソコンが来た。
おお、これは会社ではなくて自宅でも見れる!会員制サービスのIDはメールアドレスだ。ということはつまり、自宅では使えないではないか!ということで、某事務局に頼んで会員IDであるメールアドレスの変更を依頼した。
「自宅のパソコンでもIDだけだったら会社のアドレスを入力すればいいじゃん」というのは「出来る方」の発想。1台につき、1アドレスだと思っている人は多い。パソコンを買えてメールアドレスを泣く泣く変える人もいる。1台につき1メールアドレスだと思っているから。もちろんそのときにはアドバイスしてメールアドレスは変えないように言うのですけど。
「ん?依頼しないとメールアドレスが変更できないの?」というのも出来る方の発想。「変えるということはすべてえらいところを通さないとできない」とかたくなに思い込んでいる。メールアドレスが変わるともう1アカウント取る人もいる。前のものが使えなくなるとかたくなに信じているからだ。
そして、事務局にIDを変更してもらったNさん、自宅で喜んでそのサービスを使っている。
しかし、気づいた。
「僕は会社に行ってもそのサービスが使えないじゃないか」
(いや、会社ではサービス使わないほうがいいのでは)というのは野暮な突っ込み、困ったNさんは当社に連絡をしてきた。
「僕は会社でも自宅でもそのサービスが使いたい。しかし、メールアドレスは自宅のものである。どうしよう。二つ自分がそのサービスを使うべきか否か。それでなくても僕はパソコンが得意ではないのに二つも登録したらよく解らなくなってしまう」切実に問い合わせが来た。
メールアドレスはただの識別するための番号で、背番号みたいなものなので、どこにいっても大丈夫ですよ。会社でもご自宅のアドレスを入力してログインしてみてください。
と伝えると「本当?信じていいの?」
「信じてください。」
ケッキョク、半信半疑ながらログインできたようだ。それ以来あたふたした問い合わせがこないから。
IDをメールアドレスにすると間違いが少ないのでシニア層には好かれる。ID名を覚えていないことが多いからだ。かくいう私はシニアではないが、いろいろなところに登録して、登録するたびにID名を忘れてしまう。
しかし、メールアドレスをIDにすると、時折メールアドレスを変えたりすることで混乱を引き起こしてしまうこともある。
若者にとって、いや、使える人にとって、メールアドレスというIDがあるのは自然だし、ウェブメールの概念なども問題なく把握できる。しかし、使えない人にとって、ネットの概念が頭に入っていない人にとって、そういうできる人の「当たり前」がすごく難しくて、さらに、できる人が「さぞかし当たり前」のように話すと自分だけ解らないのかと孤独感を感じてしまうこともあるのである。