ああ、ロミオ。

「ああ、ロミオ、あなたはなぜロミオなの?」
「って聞かれてもねえ、親が付けた名前だしねえ。それってりんごに「なんであなたはりんごなの?」と聞いてるのと一緒じゃない?」
と、冗談交じりに話す色気のない夕方。東京は快晴です。
さて、本日は久しぶりに終日現場の日、朝から晩までシニア層に囲まれて観察のし放題。
そんななか、Sさん(女性、75歳)がいらした。
Sさんはご紹介でいらしたのですが「私、基本的なことは使えるからメールの送受信だけでいいの。」と仰っていた。
なるほどー、と思いつつ、シニア層のハートを掴むメールの作成を教える。
「じゃあ、そこをドラッグしてください」と何気なくいったら「ごめん、言葉が難しくて解らない」
「そのチカチカの前でカチッと押していただいて、ボタンを押したまま、ここまでマウスを持ってきてください」
ようやく通じる。
「この上で右クリックしてください。」
「右クリックって何?」
「中指でマウスの右側のボタンを押すことです」
すると彼女おもむろに、中指を伸ばして器用に左ボタンをクリックした。
「今、押されているのは中指ですが、押しているのは左のボタンですね。右のボタンを押してください。」
それで納得
ところが、右、左、というのが途中でどうも混乱する。
右クリック、左クリックというのがわからないというのはよく聞かれますが、「今のは右?左?」と作業後に聞かれることもしばしば。「どのタイミングで右なのか、どれで左なのかが解らない。」
途中から左右を指示するのをやめ、中指と人差し指の指示に変わる。
ところが、キーを打つ間はマウスを離すので、中指を使おうとすると中指が左クリックの上にある。
「ああ、これ、楽しくてマスターしたいのに、右左がわからないなんて、情けない」と悲しそうに言うSさん。
「大丈夫ですよ~。私もこの間久しぶりに車に乗ったら、右がアクセルかブレーキか忘れてましたから」と笑顔で答えると「運転、やめたほうがいいわよ。」と言われ、2秒ほど落ち込む。
「ねえ、なんで右クリックって言うの?どちらも右手でクリックなのにね。」
それを言われるのが一番難しい。確かにどちらも右クリックだ。マウスから見たら右ボタンだが、人から見たら、その言葉は確かに解り難い。
ああ、ロミオ。あなたは何故ロミオなの?という問いが難しい。「だってそう言われてるんだもん。」と応えるしかない。もしくは「名前を捨てましょう」
ああ、右クリック。あなたは何故右クリックというの?と聞かれてとても困る。「マウスの右についているからですよ」と言っても「同じ平面だし、よく解らん。混乱しやすい」といわれると、この紋所が目に入らぬかといわれているような気分になる。ああ、どうしよう。これじゃあ、「右クリック云々」という言葉は「わかっているフリをしている人」には混乱を招くなあと思う。マウスの操作性の限界をつくづく感じた一日でした。