難しいの線引き

「難しいことはやりたくないんです」とF女史が言う。
私はこの手のせりふを聞くと少しむっとする。
F女史は50歳代後半、自営のウェブサイトを作りたいとうちの教室に通っている。
現在、彼女が抱えている「難しい」はフォルダについてである。
ウェブサイトを作ったがフォルダがめちゃくちゃ。ファイルがデスクトップにあったり、マイドキュメントにあったり、USBメモリにあったり・・・。
使える人には信じられない話だろうが、初心者に(初心者でなくても)ファイルとフォルダの関係を感じさせるのは非常に困難である。
私が教える職業に就いたときに、どうしてそんなにみんなフォルダの概念がないのか解らなかった。
ちなみに、昨日いらしたT女史(70歳代後半)は「私の書類はワードの中に入っている」を繰り返し、新人のSが涙目になっていた。「僕の言いたいことが、うまく伝わらないんです・・・」彼は入って日が浅いので、全く解っていないということがどういうことなのかわかっていない。
自動車に軽ガソリン?を入れて「ばかばか」と一時期盛り上がっていたけど、正直、車に乗らない・仕組みが解らない私にとっては、なぜガソリンに種類があるのかすら解らない。っていうか、排気量というのをずっとガソリンの量だと思っていた。意味が解っていないということは、解っている人の考えを超越して意味が解らないのだ。私が車についての質問をすると、質問を受けた人は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をして「意味が解らない」というが、意味が解らないことすらも私は解らない。ちなみに解説を受けても理解できないので、車に対する質問をするのを出来る限り控えている。車は前に進めばいいのよ。だから私は上質を知る人のゴールド免許。(というなの身分証明。乗る気なし)
車の話で脱線してしまったが、パソコンが使いやすくなったおかげで、基本がわからなくてもなんとなく使えてしまう人が増えている。それはうれしい話とするべきところなのであるが、少し「応用」をしようとしたときに直ぐに爆発する。応用というのは、解る人にとってはたいしたことじゃないこと、どちらかというと、それは基礎だ!と突っ込みたくなるようなことが、とてもとても難しい。
「難しいことはしたくないんです。すごく簡単でいいんです。」
じゃあ、簡単がいいのなら、ここまでの制限がありますよ。ということを伝える。簡単と努力は少しばかりトレードオフだ。
「そんなことは別に興味がないんです。やりたいことはコレとアレ。でも、難しいんだったらやりたくない」
「人によって難しいの定義が違います。」と私は言ってみた。「今、なさりたいことは基本部分なのですが、とても重要で、基礎を勉強する必要がありますよ。」
「そういう難しそうなことは嫌なの」
・・・基礎が難しいか。
料理を作りたいです。包丁の握り方よりも最初から宮廷料理を作りたいの。そんな感じ。
包丁の握り方?プロになるんじゃないから別にいいの。そういう小難しそうなこと好きじゃないの。私はただ単に、手作りの蕎麦を打ちたいのよ!
#最近、こういう人多いなあ。それは商機なのだろうが、やっぱりなんだか納得できない。
彼らが難しいと思うのはどこなんだろう?
混乱を引き起こすのは何なんだろう?
そういう視点で彼らを見る。
・手順が複雑なこと(手順がスムーズにいくのではなくて、いくつか分岐があると混乱する模様)
・似たようなものがいくつもあること(例えば、ツールバーのボタン)
・基礎という香りがする言葉(基礎ってそんなに嫌い?)
男女でも違うようだ。
今、横で講習会をやっているのだが、今回は珍しく男性が多い。
エクセルの基礎をやっているようだが、聞いているといつもとは違う質問が飛び出る。
講師もなにげなくいつもより理屈っぽく説明している気がする。(いつもはギャグのほうが多い)
例えば、エクセルの計算を見た瞬間、それが2+3であれ、プシューと頭から湯気を出す人がいる。
それは手順が複雑だとかそういうのではないなあ。
以前、とある新製品をお試しで使っていただくのに、箱を渡した瞬間「わたし、こんな大きいハコ無理!!!」と絶叫した人がいた。箱。箱ですよ。ただの箱。何が無理なんだ。大きいといっても、私が昔バレンタインにあげた伝説の鳩サブレ50枚の箱よりは断然小さい。(女性の皆様、バレンタインに鳩サブレ50枚、結構評判良かったですよ。あんなにネタになったものは過去にももらったことがないと褒められました。KY)
難しいと感じる線引き、当分これを観察するだけで楽しめそうです。
ところで、第1回大人数学塾開催いたしました。
公式とか覚えていなくても大丈夫!
例えば、abcdという数字があったとき、a+b+c+dが3の倍数のとき、abcdが3で割り切れることを証明せよ。などの問題です。答えを出してチェックしてもらい、回答に矛盾があると容赦なくやり直し、です。(正解は直ぐには渡されません)とんちっぽくって爽快感を味わえます。出席者の皆さんも少し興奮状態でした。数学楽しい。
次回は6月12日、松井の誕生日です。ご興味のある方はご連絡下さい。